いまお使いのマットレスの寝心地、どう言い表しますか?
マットレスが硬い、柔らかい、心地良いといった感性は、人によって大きく異なります。そのため、マットレスの寝心地を他の人にわかるように表現することは容易ではありません。そこで私たちは、寝心地を誰もが納得できる“ものさし”を作って可視化できないかと考えました。それを「寝心地特性図」と名付け、試験機での測定結果からマットレスがどのように沈み込むのか可視化しました。そして、寝心地を定量的に科学する感性工学的手法を用い、「寝心地特性図」と人が感じる寝心地との対応関係を調査しました。
本研究の概要
マットレスの寝心地を科学的に明らかにするため、まずマットレスの特性をJIS規格に基づいて測定し、力(荷重値)と沈み込みとの関係を調べました。その結果を「寝心地特性図」として可視化し、縦軸に荷重値、横軸に沈み込み量(変位量)を示しました。さらに、被験者に実際にマットレスを使用してもらい、「寝心地特性図」と人が感じた寝心地とを比較し、その関係も検証しました。
寝心地特性図
寝心地特性図によって、マットレスに力を加えた際の荷重値と沈み込みとの関係を視覚的に理解できます。マットレスに荷重をかけると左下の原点を始点として右上に進んで最大荷重に達した後(上ライン)、除荷すると再び原点に戻っていきます(下ライン)。上ラインはマットレスを押し込み、沈み込む過程を示しており、上ラインの傾きが急であれば強い押し込み力が必要なので、硬いことを意味します。一方、下ラインはマットレスの押し返す力を示しており、上ラインとの差が小さいほど、押し返す力を反発力として感じやすいことを意味します。寝心地特性図は、マットレスの硬さ・柔らかさだけではなく、人がどのように感じるのかを表す図にもなっています。

ラグフォート®と、特性の異なる2種類のマットレス(サンプルA、B)を比較しました。

- ラグフォート®(オレンジの曲線):初期から柔らかく、沈み込みが増えても上ラインが滑らかです。上ラインと下ラインの差も小さく、反発力を感じやすいと考えられます。
- サンプルA(青の曲線):初期の上ラインは滑らかですが、沈み込みが増えると急に上ラインが立ち上がるために硬い特性となっています。上ラインと下ラインの差が大きく、反発力が小さく、底づき感が出やすいと考えられます。
- サンプルB(グレーの曲線):初期の上ラインの立ち上がりが急なために硬く感じやすいと考えられます。
寝心地評価と検証結果
3種類のマットレスをそれぞれ2週間継続使用して、マットレスの寝心地を評価してもらいました。以下に、その寝心地評価結果と「寝心地特性図」との関係を述べます。
- ラグフォート®:「底づきを訴える声がなく、違和感が少ない」結果となりました。「上ラインの滑らかな」挙動が奏功したと考えられます。また、「寝返りのしやすさ」の項目でも高評価でした。「上ラインと下ラインの差が小さい」ことで適度な反発力があり、寝返りのしやすさにつながったと推察されます。これらは、ラグフォート®の独自の素材と構造に由来しています。
- サンプルA:「底づき感」が多く報告されました。「急に硬くなる」挙動が原因だと考えられます。
- サンプルB:「違和感があり、フィット感に欠ける」印象でした。「初期の上ラインの急な立ち上がり」が原因だと考えられます。
3種類のマットレスを用いて寝心地評価を実施したところ、寝心地評価が「寝心地特性図」と一致しており、「寝心地特性図」の有用性が検証できました。しかし、サンプルAとサンプルBとも、寝心地評価は低い傾向でしたが、ラグフォート®は高評価でした。「寝心地特性図」において、ラインが急激に変化せず、滑らかに変化することが重要であると考えられます。

継続使用による寝心地の変化
2週間の継続使用の結果、多くの被験者で「初期にあった違和感が日を追って減少する」傾向が確認されました。たとえば、サンプルAは使い始めに違和感があったものの、2週間後には軽減し、寝心地の評価も時間とともに向上しました。一方で、サンプルBは3サンプル中でも初期の違和感が最も大きく、2週間後も違和感が残る結果となりました。ラグフォート®は初期から違和感が少なく、開始から終了まで評価が安定して高い水準を維持しました。つまり、寝心地は「慣れ」によって改善が進む一方で、初期の不快感が強すぎる場合は十分に改善しないと考えられます。
まとめ
今回の研究を通じて、「寝心地特性図」と感性工学的手法を組み合わせることで、マットレスの寝心地を科学的に理解し、マットレス設計に反映できることが確認されました。これは、従来は経験則に依存しがちだったマットレス設計において大きな進展といえます。また、マットレスの寝心地は短時間の印象だけで判断できず、時間の経過によって評価が変化することも明らかになりました。特性上優れているマットレスは継続使用によって評価が高まりやすい一方、初期の違和感が大きい場合には十分に改善しないケースも見られました。実際に本研究では、ラグフォート®が初期段階から違和感が少なく、継続使用でも安定して高い評価を得られたという結果も得られています。
これらの知見は、マットレス選択において「硬さの変化」「反発力」「底づき感の少なさ」といった要素を考慮することの重要性を示唆します。ただし、これらの要素は現状では市場全体で統一的に定量化されておらず、その共通指標を確立することが今後の課題です。私たちは、この課題を解決する方法として「寝心地特性図」をさらに一般化し、科学的な評価軸として確立する研究を進めていきます。











